第一話へ第二十二話へ いや、性感帯と云うのは違うのかもしれない。俺の手は、山下さんの両手に包まれて、めいっぱいの愛を感じていた。全身が抱きしめられたときに感じる愛の幸せ、そのミニアチュールを、手のひらを通じて山下さんが俺に与えてくれているのだと思った。そう思ったら、俺が何の反応も返さないのが悪いような気がした。俺は身体を横に向けて、俺の片手を包んでいる山下さんの手のひらへ、もう一方の手を添えて握り...
第一話へ第二十一話へ 夕方には、俺を含めた三人の新牧師のための歓迎パーティが開かれた。メニューはパンとチーズとスープなど変わり映えのしないものだったが、今日は加えて特別にワインが饗された。ワインなんかあまり飲んだことがないが、今日は歓迎される立場だ、一杯も飲まないわけにはいかなかった。山下さんから渡されたグラスをぐいっとあおると、ぐるんと目が回るような酩酊感があって、ほんわかと気持ちよくなった。み...
第一話へ第二十話へ「今日、ここに、一人の若者が、牧師候補としての生活を終え、岐路に立ちました。道は二つに分かれています。一方の道には、私たちがほんの少し先を歩いています。もう一方の道には、何があるのか、私には断言することができません。私たちにできるのは、彼がどちらの道を選ぶのか、見届けることだけです。もっとも、彼が私たちと同じ道を選んだならば、少し先を歩く者として、道を照らすことはできるでしょうけ...