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全国中学校対抗ペイント弾合戦 第二話

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ヒロアキが手を挙げた。
「早い段階で負けると東電送りというのは本当ですか」
ヒロアキはいつでも鋭い所を突く子だ。
「そういう噂が流れているようですが、社会の教科書に載っているとおり、職業に貴賤はありません。適性があるとなれば東電からでもどこからでも、採用通知がくることでしょう」
 職業に貴賤はない。確かに学校ではそう教えている。だが、生徒らは周りの大人たち、特に寮監の先生らの影響を受けて、自然と次のような信念を抱くようになる、「自衛軍幹部は偉い、官公庁に勤める公務員は次いで偉い、一般企業に勤められればまあそこそこだろう、自衛軍兵卒からの叩き上げコースはキツい、東電職員は生き地獄」と。因みに東電とは東亜電力公社の略称で、ヌッポンの電力供給を一手に引き受ける。
 ヌッポンと諸外国との緊張関係が高まり自衛軍が政府の中で強い発言力を持つようになったヌン子力元年の頃、国内の格差拡大が問題になっていた。政府は格差是正のため、全ての保育所、小学校、中学校を国営化、全寮制化するとともに、全ての官公庁、企業にも全寮制化を拡大した。このヌン子力元年における一大改革によって、全てヌッポン国民は、生まれたときから親元から離され、政府による統制のもと全国一律の教育環境を整えた保育所、小学校、中学校を経て、常に学校や職場の寮を生活拠点として成長するようになったという。私はすでにヌン子力元年生まれの世代よりも二回りは下の世代であり、生みの親の顔を知らないし、それが当然で育ってきたから何とも思わない。しかし高齢者の中には未だに強い違和感を持つ人もいるという。もっとも、反感を持っていることを公言すれば警察に捕まるから誰もそんなことは大っぴらに云わないし、またそんなことは生徒に教えなくてもいい。
 この「ペイント戦」の建前上の目的は、自衛軍、官公庁、企業のそれぞれが、各学校の戦績から適正を判断して採用者を選ぶためと云われている。が、適正も何も、客観的に見てわかるのは各学校がいつ敗退したか、都道府県内もしくは全国の中でどのくらいの順位に位置しているかということだけであり、少なくとも自衛軍と官公庁に関しては、戦績の高い順に学校ごとに採用しているとしか思われないし、緒戦で敗退した学校の卒業生には東電行きの通知がきているという噂がかなり高い頻度で流れているから、まあ、「自衛軍幹部、官公庁、一般企業、兵卒、東電」というヒエラルキーはまず間違いないのだろう。

「次にペイント弾合戦のルールを説明します。配付した資料の五ページを見てください。各中学校の三年一組の教室には、本拠基地に見立てたスイッチ、通称『敗退スイッチ』が設置されています。これを押すと、ペイント弾合戦管理事務局のコンピュータに信号が送られ、その学校はその瞬間に敗退したことになります。ですから、お互いに、敵校のスイッチを押すことがペイント弾合戦第一段階の目標となります」
ハヤトが「じゃあ自分の学校のスイッチ押したら、自爆? 自爆?」と騒ぎだした。あまりに不謹慎な内容に、ハナやエミを始め周りの席の生徒が一斉にハヤトをたしなめ、ハヤトはしゅんとなった。ハヤトよ、そのまましゅんとしていなさい。
「東京都内で勝ち残っている学校が八校になったら、第一段階は終了です。次にトーナメント形式で都内予選が行われます。都道府県それぞれの一位が出揃ったら、全国大会へ進み、順位を決定します」
生徒たちは遠い世界の話を聞くような目をしている。まあ、全国大会まで行かなくても、それなりに人並みの生活はできよう。
「次、制服の取り扱いについて説明します。資料は七ページを開いて。中三になると、新しい制服が支給されます。その制服が、皆さんの一年間の身分を保証します。従って、その制服をペイント弾で汚されたり、まさかそんな人はいないでしょうが紛失したりすると、その人は三鷹一中の三年生たる資格を失います。当然、それ以上中学生でいられなくなりますから、訓練所に入所することになります」
これがペイント弾合戦の肝となる脱落ルールである。訓練所には、初等訓練所、軍事訓練所、職業訓練所の三つがある。初等訓練所は小学校の教育水準に達しない児童を教育する施設で、中学生の脱落者が入所するのは軍事訓練所か職業訓練所である。軍事訓練所の修了後は自衛軍への入隊、職業訓練所の修了後は東亜電力公社への入社が義務付けられる。身も蓋もない云い方をすれば、要するに訓練所とは人生の墓場である。

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人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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