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悪魔とトオル 第四話

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 その晩のアヤの夢は図書室のカウンターでした。別のクラスの女の子を一人挟んで、その向こうにトオルもいました。アヤはトオルと同じ図書委員の仕事でカウンターに座っているのでした。
「……でさあ、ケイスケったら意地になっちゃって。このぬいぐるみ絶対取ってやるとか云ってクレーンゲームにかじりついちゃって」
アヤはケイスケとのデートの惚気を、別のクラスの図書委員の女の子に話していました。トオルはその向こうで聞いていないふりをして聞き耳を立てていました。アヤにとってトオルは、「たぶん私に気がある、ちょっと可愛い男子」のようです。
「そしたらさ、アイツ、人を待たせてるって意識の欠片もないのね、ずうずうしくもこのあたしに『500円貸して』とか云って、あたしを無視してずーっとクレーンに熱中してんの。しかも結局いま合計1500円借りてんのよ。どんだけ人の金を浪費すれば気が済むんだって話だよね」
なるほど、おもしろいほど惚気です。トオルは、奥の方で耳ダンボになっていて、アヤはそれをも楽しんでいるようです。たぶん、これをトオルは深刻な話として聞いているのでしょう。いや、ひょっとしたらもっとひどい内容の「愚痴兼惚気」のようなものを、アヤは日常的に聞こえよがしに云いふらしているのかもしれません。

 次の日、私は姿を消したまま、こっそりトオルについて学校へ行きました。学校でトオルは、折に触れて隣のクラスをちらりとさりげなく覗いていました。アヤとケイスケがいるクラスです。ケイスケやアヤの姿を見るたび、アヤがケイスケの愚痴をこぼすたび、トオルは何気ない風を装いながら内心を動揺させているのでした。私がにらんだ通り、トオルの目と耳は嫉妬で曇っていました。私はトオルの耳に息を吹きかけ、トオルの瞼を指先で撫でて、嫉妬の炎を強め、耳目をもっともっと曇らせてあげました。

 そうして何日かが過ぎました。トオルは毎晩ケイスケへの憎悪を増幅させる夢を見ているのでしょう、彼の顔つきは、日に日に私好みの憎悪に満ちた顔に近づいていきました。私は、昼は学校で情報を集め、夜はアヤの夢を散歩して過ごしました。実は最初の二、三日で作戦決行のために必要な情報は集まっていたのですが、トオルが日々悶々としているのが可愛かったのでつい先延ばしにして焦らしてしまいました。トオルはたびたび私を呼んでまだかまだかと催促しました。その度に私は「準備というものがあるのだから」と諭して、宥めすかして遊びました。楽しかったです。

 そんなある日、トオルは学校で、アヤと仲のいい女子生徒たち数人が噂話をしている断片を聞きました。その噂話には「アヤ」「デート」「今度の日曜」「度胸あるよね」「狭い空間に二人っきり」という語句が含まれていました。トオルの耳は今や研ぎ澄まされ、それらの語句を決して聞き逃さず、さらにそこから解釈を拡大して心に強い不安と動揺、そして憎しみをかき立てることができるようになっていました。
 その晩トオルは早速私を呼びました。
「おい悪魔、今度の日曜日、何があるか知っているか」
トオルはいつになく攻撃的な口調で私に問いかけました。

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右斜め下

Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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