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聖トリニティ退魔士会 第八話

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「私たちはここで、『悪魔』という存在を仮定します。人間は最初、神の声に素直に従って楽園で生きていました。そこに悪魔がやってきて、イヴを誘惑して禁断の木の実を食べさせました。悪魔の誘惑に負け、木の実を食べたイヴとアダムの子孫が私たちです。私たちの中にも連綿と、悪魔の誘惑が受け継がれてきている、というふうに私たちは考えます。なぜそういうふうに考えるかというと、元来私たちは、神の声を素直に聴いて受け容れる素質を持っているんだ、それができないのは悪魔のせいなんだ、と考えたいからです。そして、私たち全員が悪魔の誘惑を克服できたとき、――いつになるかわかりませんが――地上に楽園が再現します」
 なるほど、確かに理屈の上ではそういうことになる……のか? ちょっと比喩が飛び飛びすぎて、俺の頭が追いついてないような気がする。
 田口先生はここで一旦言葉を切って、会場を見わたした。俺もつられて会場を見回すと、参加者は誰も彼も、心を雷に撃たれたように感動している。涙を流している人さえもいる。
「何か、ここまでのところで、ご質問、ご感想などはありますか。はい、山野さん、どうぞ」
「名前を憶えていてくださって光栄です、山野です。先生のお話を伺うのはこれが初めてではありませんが、また新しい発見をしたような気がいたします。今後も内なる誘惑の克服を目指して精進していきたいと思います」
 そうか、こうやって感想を云うのもありか。しかし、俺には訊きたいことがある。手を挙げてみよう。
「はい、そこの男性、初めまして。お名前を伺ってもよろしいですか」
「あっ、はい、初めまして、中村です。あの、質問なんですが、どうして『悪魔』なんでしょうか。悪魔がいるなんて、科学的に考えるとちょっと信じられないですよね。先生は悪魔という存在を『仮定する』とおっしゃいましたが、それは、悪魔がいると信じるということではなく、想像上のものなんですか」
 田口先生は深く頷きながら俺の話を聞いて、俺が質問を終えた後も、何か大きいものを咀嚼するかのように何度か深く頭を上下させて考えた。
「中村さん、大変意義の深い質問をありがとうございます。結論から申し上げますと、その通り、想像上のものです」
「中村さん、あなたに、ちょっと想像してみていただきたいんですが、失礼ですがあなたが例えば、ギャンブル依存症だったとしましょう。パチンコなんかやめなきゃいけないということは頭では分かっているがついパチンコに行ってしまう。そんなとき、『自分の意思でパチンコに行っている』と考えるのと、『自分の中に悪魔がいて、その悪魔の誘惑でパチンコに行かされている』と考えるのと、どちらが克服しやすいと思いますか」
「ああ、なるほど。悪魔を想定した方が、ギャンブルを克服しやすいです」
 ちょっと目からうろこが落ちたような気分だ。あれ、涙が出てきた。
「悪魔という言葉が発明された時代のことは私たちにはわかりませんが、もしかすると、自分の中にある悪を外在化させて克服するために、発明された言葉なのかもしれませんね。ご質問ありがとうございました」
「いえっ、こちらこそありがとうございます」
 俺は腰を下ろした。初めて田口先生と一対一で言葉を交わしたことと、先生が質問に真正面から答えてくださったことで、俺の胸はいっぱいになった。隣を見ると、大原さんがにっこり微笑んでハンカチを貸してくれた。俺は涙を拭いた。

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右斜め下

Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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