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王妃様は魔女 第六話

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 農民の生活がいよいよもって行き詰まりを見せたころ、王妃様は魂を抜きとった人間たちの抜け殻を使って、新たに金貸しの事業を始めました。金貸しは、誰にでも或る程度まで金を貸します。しかも、一か月以内に返済すれば利子がつきません。ただし、一か月を過ぎると二倍の金額を返さなければならず、二か月を過ぎると取り立て屋が動き出すのでした。取り立て屋に捕まった人は、身ぐるみ剥がされて奴隷にされました。
 金貸しの事業と並行して、王妃様は市内に円形闘技場の建設を開始しました。農業に行き詰まった農民の多くは、金貸し屋から金を借りて自転車操業を続けるか、農地を放棄して円形闘技場の建設作業に携わるかのどちらかでした。金貸しに借りた金を返せず取り立て屋に捕まった者も、建設作業に従事させられました。
 一年がたち、円形闘技場が完成すると、王妃様は奴隷たちを剣闘士にしました。建設作業に従事していた者たちは、もうこれ以上仕事がなく、農地にも戻れませんでした。そのような人たちの中にも、常備軍や剣闘士に志願する人がありました。円形闘技場の地下には剣闘士たちの居住区が作られていました。剣闘士はそこから出ることを許されませんでしたが、居住区の生活は農村よりもずっと恵まれていました。食事は保障され、酒や娼婦といった娯楽も充分でした。
 円形闘技場では、毎日剣闘士たちによる競技が行われ、王妃様の暴政に不満を持つ市民たちが憂さを晴らすために毎日たくさん集まりました。剣闘士の居住区での生活は恵まれていましたが、いざ競技に出ることになると、戦う二人のうち一人は必ず死ぬのでした。市民たちは剣闘士が決死の覚悟で戦い、そして死ぬのを大歓びで見物しました。試合の終盤には、観客席から「殺せ、殺せ」という大合唱が沸き起こるのでした。無論、王妃様も、かかしの王様を従えて円形闘技場をよく訪れました。王妃様が見てお喜びになるのは、剣闘士の必死の姿よりもむしろ、市民の熱狂ぶりでした。王妃様はかかしの王様とともに市民に手を振り、にっこりとほほ笑まれました。
 それからというもの、剣闘士という地位は、死刑と投獄(拷問)に次ぐ刑罰として不動の地位を獲得しました。市民たちは剣闘士が死ぬのを娯楽として楽しみましたが、同時に、権力者の機嫌を損ねたら自分もあの闘技場で戦うのだという不安も、頭の片隅に残っていました。その不安に気づかなかったことにするために、市民たちはいよいよますます剣闘士競技に熱狂し、「殺せ」コールに喉を嗄らすのでした。

 王妃様はここまでの仕上がりにおおむね満足されていましたが、せっかくだから農民や常備軍や剣闘士だけでなく、都市の城壁の中でまだ比較的余裕のある市民たちも苦しめたいと考えました。そこで目を付けたのが、穀物の輸入先でした。農業がすっかり衰退した王妃様の国では、穀物供給を海外に頼っていました。海峡をはさんだ隣の国が一大農業国でした。王妃様の国では、建築技術や武器を作る手工業技術が発展していましたから、それを輸出する代わりに穀物を輸入していました。王妃様はその最大の貿易相手国に宣戦布告をしたのです。
 輸出入は完全に停止しました。困ったのは商人たちです。今まで互いを頼りにしていた商売相手とのつながりが、戦争で断ち切られてしまいました。それに加えて王妃様は、戦争を名目に、商工業者にも重い税を課しました。市民たちはこぞって金貸し屋を利用し、そろって剣闘士に身をやつしていきました。
 剣闘士の数はぐんと増えました。剣闘士の数が居住区に入りきれないほどになると、王妃様はバトルロイヤルを興行しました。一度にたくさんの剣闘士を闘技場に入れて、最後の一人になるまで戦わせるのでした。
 市民たちの不安は高まりました。何せ食料の物価が急騰しています。金はあっても食べ物がないのです。その金も、税に取られていきます。このままではいつ自分が剣闘士にさせられてもおかしくない。市民たちは不安から目をそむけるため、足しげく円形闘技場に通いました。
 王妃様は市民の不安を和らげるため、円形闘技場に新たな競技種目を設けました。「的当て」です。「的当て」が開催される日には、観客一人一人にボウガンと矢十本とが手渡されました。闘技場の中央では、通常の競技と同じように二人の剣闘士が互いを殺し合います。しかしそれに加えて、観客たちが剣闘士に向けてボウガンを射ていいのです。ボウガンの矢にはそれぞれ番号が記された矢羽根が付いており、剣闘士に矢を当てた市民には景品が出ました。この新しい残虐な遊戯を市民は大歓迎しました。今まで「殺せ」コールでしか参加できなかったものが、自らの手で剣闘士を殺せるようになったのです。不安に追い詰められた市民がどこまでも人間性を失っていく様子を、王妃様はうっとりしてご覧になりました。
 今度の戦争は、前の戦争ほど簡単に終わらせるつもりはありませんでした。戦争が長引けば長引くほど人々が苦しみ狂っていくのを、王妃様はずっとバルコニーから眺めていたいと思いました。政治は完全に行き詰まっていました、というより、王妃様がこれ以上手を下さなくても、人間たちが勝手に事態を悪化させていくのでした。王妃様は充分に満足されました。

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Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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