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悪魔とトオル第二部 第五話

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 深夜十一時、アヤが学校の敷地に入りました。アヤが家から抜け出すこと、学校のセキュリティを誤魔化すことに関しては、私が手伝ってあげました。
――アヤ、セキュリティのことは気にしなくていいわ。鍵も開けてある。そのまま校舎に入り、屋上に出なさい。そこに、全ての用意がしてあるわ――
「わかった」
 アヤは小声で答えました。

 十一時半になって、トオルが現れました。それで気が付いたんですが、トオルはどうやって家を抜け出してきたでしょう。トオルがこんな時間に外出したら、お母さん、心配するんじゃないでしょうか。トオルの方のケアをすっかり忘れていました。てへ。まあ、トオルに関しては、親バレしても、それはそれで面白いことになるので、よしとしましょう。
 トオルはそわそわして、一分おきに腕時計をチラチラと見ました。アヤは屋上で息を潜めていました。
――アヤ、ここから先は、声を出してはいけないわよ――
 アヤは頷きました。
――十一時五十九分になったら、私が合図してあげるから、縄を手すりから下に下ろしなさい。縄は普通の人の目には見えないから、安心して下ろしていいわ。縄は私がトオルの首に導いてあげる。そうして、再び私が合図したら、アヤ、あなたは思いきり縄を引っ張り上げる。それであなたの復讐は成就するわ――
 アヤは唾をごくりと飲み込んで、頷きました。素直ないい子です。こんな素直ないい子を……、と思うと、心が痛みます。嘘です。
――それから、万が一の時のために、これを持っておきなさい。復讐の剣よ――
 アヤの目の前に、金色に輝く両刃の剣が現れました。アヤはそれを両手で受け取りました。

 頭がくらくらするほどに美しい三十分間でした。まるでロミオとジュリエットでも見ているような陶酔でした。地上には悪魔に憑かれた少年が、獲物が現れるのを今や遅しと待っていました。屋上には復讐の悪魔に憑かれた少女が、こちらも、獲物を捕らえるために、縄と剣を手に息を潜めているのでした。糸の切れた恋人たち二人を、満月が照らしていました。あまりの美しさに、私はため息を漏らしました。

 十一時五十九分になりました。予ベルを鳴らし、客席の灯りを落としましょう。満月に薄く雲が懸かりました。
――アヤ、時間よ。縄を手すりから下に下ろしなさい――
 アヤが縄を下ろしました。私は縄の先を持って、壁づたいにトオルの方へ降りていきました。縄も、私の姿も、今はトオルには見えていないはずでした。
「……おい、悪魔よ、いるのか」
 トオルが不意に口を開きました。私はひやりとしました。契約期間中だったら即座に答えなければならなかったでしょう。危ないところでした。なんて勘のいい男の子でしょう。
 私はトオルの首に手を回し、縄をトオルの首にかけました。トオルは何も気づかずに、そわそわして腕時計を見ました。腕時計は二十三時五十九分四十秒を指していました。私はそっと、トオルの額に口づけをしました。さようなら、トオル。もしあなたが死んでしまったら、魂は大事に地獄まで送ってあげるわね。

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右斜め下

Author:右斜め下
人が苦しむ物語が好きなんだけど、苦しんでいれば何でもいいってわけでもない。
自分でも「こういう話が好きです」と一言で言えないから、好きな話を自分で書いてしまおうと思った。
SとかMとかじゃないんだ。でもどっちかっていうとM。

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